視聴率100%
先輩と電車に乗っていた。
つり革につかまり立っていたのだが、あと数駅で最寄駅につくタイミングで
先輩とは反対側から
「こちら席どうぞ。」
という声が聞こえた。
もともとひと席空いていたところに、
30歳手前くらいの男性が歩いてきて手を差し出していた。
もうすぐ目的地につくし、一人分の席しか空いていたかったので立ったままでいいやーと思っていたので
「いえ、座らないのでどうぞ。」
と返した。
立っている乗客は我々しかいないくらい空いていて、その場にいる全員の視線がここにに集まっているのがわかった。視聴率100%。
「このチームどこか知ってます?サッカーの。」
男性はおもむろに自分が着ていた鹿島アントラーズのユニフォームの左胸のロゴの部分を指差した。
私はもちろん鹿島アントラーズを知っていたが、視線が集まっていて恥ずかしいのと見知らぬ男性への恐怖から首を傾げた。
隣では先輩がずっとケタケタと笑っている。
男性はその後しばらく喋ったあと、その場を立ち去った。
この時点でもまだ視聴率100%
「あの人と目があったの?」
先輩は笑いがひと段落おさまってから聞いてきた。
「いや、全然あってないですよ。鹿島アントラーズはわかりましたけどね。」
私は冗談っぽく言った。
「えー、じゃあ答えてあげればよかったのにー。」
「まあそうなんですけど。早く会話終わらせたいなと思ってしまって。」
こんな話をしながら電車を降りて、
あの人ともっと話を広げていたらどうなっていたのだろう、と考えた。
明らかにナンパ目的という感じではなかったし、そんなに警戒心を持たなくてもよかったのかな、、
日本では知らないひとにいきなり話しかけられるとびっくりしちゃうけど、アメリカではこれが日常かあ、、
変なひとに捕まると怖いから、ネズミ講の誘いかも、ナンパかな、といった警戒心が必要以上に新しいコミュニケーションや新鮮なインプット、ただの日常会話を制限しているとしたら、なんと寂しい考え方なんだろう。
みんなの注目を浴びるのが恥ずかしい?視聴率稼いでなんぼじゃん?
と反省した帰り道
それにしても、なんだったのかなあの人、、。
ただ話したかっただけだったのだろうか、、
とやはり目的を考えてしまう性分なのであった。